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大阪高等裁判所 昭和56年(う)37号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中一〇〇日を本刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人徳矢卓史、同布施裕連名作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

論旨は、量刑不当を主張するものであるが、所論にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調の結果を参酌して検討すると、本件は、被告人が昭和五五年一〇月七日及び同年同月一三日の両日、いずれも朝の通勤電車内において、女性の乗客が肩に掛けていたシヨルダーバツグ内から、財布各一個(在中現金合計約二九四〇円、時価合計三八八〇円相当の雑品)をすり取り窃取したすりの手口による窃盗二件の事案であつて、右犯行の罪質、動機、態様、被告人の経歴、前科等の諸事情、殊に被告人は、昭和五五年四月二一日本件各犯行と同種の態様のすりの手口による窃盗罪で懲役一年二月、三年間刑執行猶予に処せられながら、その執行猶予期間中に本件各犯行に及んだもので、この種犯行の常習犯化の傾向が認められることに徴すると、犯情を軽視することはできず、被告人の母親が被告人に代つて、被害者両名に対し、被害弁償として現金各一万円を支払い、右両名から被告人のための嘆願書が提出されていることなど所論指摘の点を十分考慮しても、本件は被告人に対し所論のいう再度の刑執行猶予を言い渡すべき事案とは認められず、被告人を懲役一年二月の実刑に処した原判決の量刑が重過ぎるとは考えられない。論旨は、理由がない。

よつて、刑事訴訟法三九六条、刑法二一条により、主文のとおり判決する。

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